《2003年》
2003年会場(題詠マラソン2003)
http://www.sweetswan.com/daiei-2003/
2003-001:月(yasuzi)移ろいの春花秋月くりかさね暦をめくる指の皺にも
2003-002:輪(yasuzi)安物の婚約指輪をはめた指 この世に一つの遠いむかしの
2003-003:さよなら(yasuzi)さよならの重さを量りポケットになくしたものはポケットにもなく
2003-004:木曜(yasuzi)梅雨となり朝から雨の木曜日 忘れ物したそんな気がした
2003-005:音(yasuzi)せせらぎの音をまくらにうたた寝の川沿いの町 雨そぼ降りぬ
2003-006:脱ぐ(yasuzi)脱ぐ服をハンガーにかけ初夏の風まどを開ければ風鈴の鳴る
2003-007:ふと(yasuzi)中華屋でチャーハン焼きそば餃子つけ腹もふとるか健啖ぶりの
2003-008:足りる(yasuzi)満ち足りる幼き笑顔の明るさにベランダの花しろく香りぬ
2003-009:休み(yasuzi)初夏の午後ひとり歩きの公園で人の多さに休みとぞ知り
2003-010:浮く(yasuzi)沼に浮くしかけのウキは動かずに空の青さの麦わら帽子
2003-011:イオン(yasuzi)幼子にライオンキングの絵本よみ眠りにおちる手足の温さよ
2003-012:突破(yasuzi)昨晩の限界突破の二日酔いリセットできぬか愚痴もゆふべも
2003-013:愛(yasuzi)愛飲の酒は伏見の月桂冠 のむほど甘く恥じぬ名前よ
2003-014:段ボ-ル(yasuzi)断捨離でみごと詰まった段ボール捨てることなく古着屋に売り
2003-015:葉(yasuzi)ベランダの観葉植物ともどもに夏の来る日を楽しみに待つ
2003-016:紅(yasuzi)紅葉の秋の陽射しは柔らかく人待ち顔で夕陽ながめる
2003-017:雲(yasuzi)ベランダの観葉植物 楽しげに 入道雲の夏はそうめん
2003-018:泣く(yasuzi)泣く顔も姿もかわいい幼子のちいさき肩に頬ずりをする
2003-019:蒟蒻(yasuzi)豚汁に蒟蒻にんじん大根を夕餉の酒のあての賑わい
2003-020:害(yasuzi)害獣のイノシシの肉ありがたく鍋につつんで秋も更けゆく
2003-021:窓(yasuzi)窓に降る雨をながめて煙草つけ静か街並み梅雨に煙るか
2003-022:素(yasuzi)味の素かけたキュウリの浅漬けで茶漬けおかわり二杯目を喰う
2003-023:詩(yasuzi)本棚に眠る詩集を読み返し栞かわりの旅の写真も
2003-024:きらきら(yasuzi)ぎらぎらと沈む夕陽に反射して湖面きらきら魚がはねる
2003-025:匿う(yasuzi)犯人を匿うような事もなく波風たたぬ平凡な日々
2003-026:妻(yasuzi)別れたがかつては妻と呼んだ人 路傍の花が今年も咲くか
2003-027:忘れる(yasuzi)歳を取り忘れることも慣れた頃それも一つの生き方と知り
2003-028:三回(yasuzi)三回忌行けぬと悔やむ冬寒に此方は此方の暮らしもありて
2003-029:森(yasuzi)爽やかな森林浴とかしてみたいベランダに出て深く息吸う
2003-030:表(yasuzi)表札の名字ながめる散歩道キンモクセイの香りかすかに
2003-031:猫(yasuzi)公園で泣いてる子猫をひろいあげ連れて帰ると笑ふ友だち
2003-032:星(yasuzi)夏休み星座の数をかぞえてる 蚊取り線香 花火 に 西瓜
2003-033:中ぐらい(yasuzi)生ビールうまく飲めるは中ぐらいぬるくもならず程よい重さ
2003-034:誘惑(yasuzi)ベランダのそよ吹く風に風鈴の午睡にねいろが誘惑さそふ
2003-035:駅(yasuzi)夏の駅 時間待ちする待合に 白い浴衣の婦人が座る
2003-036:遺伝(yasuzi)風呂上がり鏡にうつる醤油顔わが家の遺伝かソースは居ない
2003-037:とんかつ(yasuzi)とんかつの飯を三杯おかわりし箸をやすませ豚汁たのむ
2003-038:明日(yasuzi)ひとり言つもろーツモロー呟いて明日の予定はなにも無いけど
2003-039:贅肉(yasuzi)贅肉のプロですほんたふ本当ですアイスクリームが大好きなんです
2003-040:走る(yasuzi)突然の夕立走る昼下がりカミナリ様の景気の良さよ
2003-041:場(yasuzi)公園の運動場でランニング息があがって一日坊主
2003-042:クセ(yasuzi)クセなどはありませんのと笑ふひと軽い答えで嘘をつく癖
2003-043:鍋(yasuzi)枝豆に塩をまぶして鍋でゆであつあつを喰ふ夏のビールと
2003-044:殺す(yasuzi)哀れ蚊を殺すか迷う人もおり秋ともなれば人も恋しく
2003-045:がらんどう(yasuzi)がらんどう夏の暑さに脳みそも蒸発するかポクポクと鳴り
2003-046:南(yasuzi)初夏の候 風鈴うけて 南風 梅雨もあけたか暇な日曜
2003-047:沿う(yasuzi)沿う道の寄り添う川で昼餉食べ峠越えれば海がひろがる
2003-048:死(yasuzi)死んだとは思えぬ程に生気満ちゆふべの友の歳とらぬ夢
2003-049:嫌い(yasuzi)ありますよ人の世のなか好き嫌い餃子と焼きめし好きな方です
2003-050:南瓜(yasuzi)茄子浸し 南瓜しょうゆで炊き込んで 冷まして食べる熱いご飯と
2003-051:敵(yasuzi)糖尿の敵はアイスやラーメンで味方は野菜と分かっているけど・・
2003-052:冷蔵庫(yasuzi)冷蔵庫あけては閉める炎天下冷えた麦茶とわらび餅くふ
2003-053:サナトリウム(yasuzi)岬にてサナトリウムの白い壁とおく近くに潮騒きこへ
2003-054:麦茶(yasuzi)ちゃぶ台に置いた麦茶もはやぬるく打ち水まいて涼を呼び込む
2003-055:置く(yasuzi)仕事置く骨休めする昼下がり井戸で冷やした白玉よばれる
2003-056:野(yasuzi)曇天の列に射し込む晴れ間かな路傍の花よ野辺の送りよ
2003-057:蛇(yasuzi)炎天下蛇口の水もぬるみ・お湯!気も使います亀の水替え
2003-058:たぶん(yasuzi)たぶんもう来てる頃だと親戚の家にそろうか親類の数
2003-059:夢(yasuzi)年末の庶民の夢か宝くじ師走の風もどこか忙しげ
2003-060:奪う(yasuzi)大はしゃぎビキニサンダル目を奪うおんなのこってやっぱりぃいいな♫
2003-061:祈る(yasuzi)恐ろしい核戦争や地震など平和な星になれよと祈る
2003-062:渡世(yasuzi)大仰に渡世などとは恥ずかしい目立たぬような日々の幸せ
2003-063:海女(yasuzi)シンプルな海女の料理にしたづつみ「とれたてだものうまいだけんね」
2003-064:ド-ナツ(yasuzi)シンプルなドーナツよりもチョコ入りやわまりにかけたのも旨そうだ
2003-065:光(yasuzi)薄曇り雨が上がって公園の光が射してはしゃぎ声する
2003-066:僕(yasuzi)ポストから手紙とりだす僕宛の白い封筒初夏の風吹く
2003-067:化粧(yasuzi)化粧などせずにすむのは楽だけどヒゲを剃るのも大儀な日もあり
2003-068:似る(yasuzi)しつけとか犬は主人に似るといふ主人はたれに似るのだらふか
2003-069:コイン(yasuzi)ワンコイン晩酌セットできりあげて誰が待つでもない部屋に帰る
2003-070:玄関(yasuzi)きょうは雨玄関の靴もだるそうで雨を理由に仕事も休むか?
2003-071:待つ(yasuzi)うな重のせいろ待つまの流し酒 庭の破竹の新緑しみる
2003-072:席(yasuzi)喫煙の席に座って汗を拭き「ねえちゃんレイコ」 は 死語に近いか
2003-073:資(yasuzi)資産など持ったことない貧乏人ふつごうもない普通の暮らし
2003-074:キャラメル(yasuzi)キャラメルを食べることなどとうになくチョコレートなら今もやります
2003-075:痒い(yasuzi)痛痒いかさぶたをはぐ気持ちよさ借金返す気持ちにも似て
2003-076:てかてか(yasuzi)てかてかのホルモン焼きの鉄板はとても旨そう値打ち千両
2003-077:落書き(yasuzi)電話ちゅう落書きをして窓の外そぼ降る雨に寒さ覚える
2003-078:殺(yasuzi)蚊を殺し赤く染まった手のひらの己の血の色あかいと思ふ
2003-079:眼薬(yasuzi)眼薬の処方を貰い薬局へメバチコなんです てれたりしてみる
2003-080:織る(yasuzi)はたを織る職人技のよい音や耳で楽しみ茶などよばれる
2003-081:ノック(yasuzi)ノックして心の扉を開けてみるベランダに咲く花を見つめる
2003-082:ほろぶ(yasuzi)ほろぶ身の人の憐れの世の常よ平和であれとせめて祈るか
2003-083:予言(yasuzi)予言とかスピリチュアルなことも好き不思議なことも世にはあるもの
2003-084:円(yasuzi)五百円硬貨を貯める貯金箱五百円玉いれる楽しみ
2003-085:銀杏(yasuzi)銀杏のウンコのにほいは、ご勘弁ことさら旨いものでもないし
2003-086:とらんぽりん(yasuzi)とらんぽりんポンポン飛んで楽しげな子どもの笑顔はかえられぬもの
2003-087:朝(yasuzi)早朝のウオーキングの帰り道 名もしらぬ花 野辺に咲くかな
2003-088:象(yasuzi)面白きこともなき世の現象は酒を飲んでも満たすことなく
2003-089:開く(yasuzi)夜開くスタンドバーに灯がともりちょうちょが止まる嘘の花にも
2003-090:ぶつかる(yasuzi)ぶつかるも素知らぬ顔で通り過ぎ修羅の命のむなしさが増す
2003-091:煙(yasuzi)梅雨寒の煙る街並み見下ろして初夏とも言えぬが風鈴の鳴る
2003-092:人形(yasuzi)青い目の人形抱いた幼子の切ない夢を見る夜のこと
2003-093:恋(yasuzi)六十路過ぎ色恋ざたも遠くなり酒を枕に同行二人
2003-094:時(yasuzi)長雨の手持ち無沙汰の休日はたばこくゆらせ時が過ぎゆく
2003-095:満ちる(yasuzi)満ちる月 願掛けをして幸せを 祈るあなたの素直な顔よ
2003-096:石鹸(yasuzi)湯上がりの石鹸美人うるわしく花瓶にさした野辺の花かな
2003-097:支(yasuzi)入るより支出がまさる物価高それでも負けぬ庶民の力
2003-098:傷(yasuzi)心にはそれなり生きた傷もあり悔いも残るが前を見つめて
2003-099:かさかさ(yasuzi)かさかさのかさぶたをはぐ痛がゆさ生きてるあかしの痛みにも似て
2003-100:短歌(yasuzi)つれづれの生活のなか短歌よみ日々の暮らしに彩り添える
《2017年》
2017-001:入(yasuzi)入り日さす浜の夕陽の雄大さちっぽけなこと忘れてしまおう
2017-002:普(yasuzi)普段着のアロハのシャツのポケットに煙草しのばせ初夏の茶店に
2017-003:共(yasuzi)共白髪おしどり夫婦の知人宅たずねた日にはほっこりとする
2017-004:のどか(yasuzi)縁側でのどかな春の日を浴びて草餅などを無心に食べる
2017-005:壊(yasuzi)過疎すすみ人の住まない壊屋よ故郷の山は今も変わらず
2017-006:統(yasuzi)伝統の技に秘めたる美しさ秋の終日 陶磁器暮れる
2017-007:アウト(yasuzi)風邪を引きテイクアウトのお惣菜独りの夜の心細さも
2017-008:噂(yasuzi)行きつけの飲み屋で咲かす馬鹿話 噂話の花が咲くかな
2017-009:伊(yasuzi)伊賀焼の水指ながめ朴訥な風情たのしむ陶芸市よ
2017-010:三角(yasuzi)海賊の三角帽は伊達すぎて街にあわぬしさすがにかぶれぬ
2017-011:億(yasuzi)億劫な雨の日曜やるせなく気分を変えて部屋着きがえる
2017-012:デマ(yasuzi)でたらめな噂話のデマを聞き信じる人の不思議を思ふ
2017-013:創(yasuzi)擦り傷を絆創膏で手当てしてシャワーを浴びる濡れないように
2017-014:膝(yasuzi)歳となりそれなり痛い膝頭サプリメントの多さに迷ふ
2017-015:挨拶(yasuzi)時候など挨拶かわし茶をよばれ茶請けの煎餅バリボリといふ
2017-016:捨(yasuzi)何度目の服の断捨離知らぬ間に増えたものかと古着屋に売る
2017-017:かつて(yasuzi)かつて見た色鮮やかな牡丹かな花の命に心奪われ
2017-018:苛(yasuzi)苛苛と落ち着かぬ日もたまにあり酒でも飲んで憂さを晴らすか
2017-019:駒(yasuzi)駒焼きの湯飲みを貰い茶をいれてなんと嬉しい茶柱の立つ
2017-020:潜(yasuzi)沈潜し水底深く隠れ住む大鯉の影湖面に浮かぶ
2017-021:祭り(yasuzi)夏祭り提灯ともる公園の夜店で買った焼きいか頬ばる
2017-022:往(yasuzi)あなたとの手紙往復なつかしく読み返すには切なすぎるか
2017-023:感(yasuzi)夏風邪に感染をしてはや十日せき止まるころ梅雨も明けるか
2017-024:渦(yasuzi)渦潮の明石のタコは好物で刺身で喰ふより茹でるが旨い
2017-025:いささか(yasuzi)いささかの嘘偽りもないけれど そう言ふ嘘を平気でつく日も
2017-026:干(yasuzi)洗濯の部屋干し 夏はすぐ乾く 好きな季節よ開放感も
2017-027:椿(yasuzi)寒椿めでた季節もとうに過ぎ紫陽花の咲く初夏の風吹く
2017-028:加(yasuzi)湯加減は水に近づけシャワー浴び冷えたビールで枝豆つまむ
2017-029:股(yasuzi)股引のお世話になった冬も過ぎ好きな季節の夏がまた来る
2017-030:茄子(yasuzi)揚げ茄子を天つゆ浸してかぶりつく揚げたはしから食べる幸せ
2017-031:知(yasuzi)知床の歌が流行った昭和の日おさない記憶に父母まだ若く
2017-032:遮(yasuzi)遮断機の踏切の音きこえくるいつ開くのか開かずの踏切
2017-033:柱(yasuzi)電柱の電線とまる鳩の群れ一羽飛び立ち一群れ続く
2017-034:姑(yasuzi)花慈姑(はなくわい)クワイ畑の白い花旨くもないが正月祝ふ
2017-035:厚(yasuzi)誠実や温厚過ぎることもなく程よい加減で生きる楽しさ
2017-036:甲斐(yasuzi)夏風邪で絵を描くことの生き甲斐も少し離れて気分を変える
2017-037:難(yasuzi)マンションの非常階段利用してメタボの肉に告げるさよなら
2017-038:市(yasuzi)朝市でとうもろこしを買い求めおやつ代りの夏の味わい
2017-039:ケチャップ(yasuzi)マヨネーズ、ケチャップ塗ってトーストし冷まして食べる朝の食卓
2017-040:敬(yasuzi)ふる里の亡き父敬う幸せよ父の植えたる梅は咲いたか
2017-041:症(yasuzi)熱中症ことしも暑い夏の来るあさがお咲くか梅雨明けの朝
2017-042:うたかた(yasuzi)青い時うたかたの夢なつかしく過ぎた季節の夏の思い出
2017-043:定(yasuzi)定刻に退社する日は連れ添ってビアガーデンでジョッキをあける
2017-044:消しゴム(yasuzi)わびしさを消せる消しゴムないものか梅雨明けの空そんな青さの
2017-045:蛸(yasuzi)茹で蛸の歯ざわり旨い立ち飲みの二杯目の酒ちびりちびりと
2017-046:比(yasuzi)比較的コインで飲める気安さか立ち飲み楽しむ人の多さよ
2017-047:覇(yasuzi)覇王樹(さぼてん)を露天で買って帰る道なぜか楽しくあたたかくなる
2017-048:透(yasuzi)透明なピッチャーに入れた水道は旨くなるから何だか不思議
2017-049:スマホ(yasuzi)電車内スマホさわらず田園の車窓風景ぼんやりながめる
2017-050:革(yasuzi)革製のジッポーケースを買い求め男の楽しみ小道具に凝る
2017-051:曇(yasuzi)梅雨時の曇天つづく空ながめ散歩に出かける傘は持たずに
2017-052:路(yasuzi)この先の丁字路にある空き地には四季折々の野辺の花咲く
2017-053:隊(yasuzi)商店街 楽隊くるとポスターが 近所の神社の夏祭りのころ
2017-054:本音(yasuzi)腰いため本音は痛いが我慢して我慢強さも時に疲れる
2017-055:様(yasuzi)お日様が梅雨の晴れ間に顔を出し夏の近さを思い出させる
2017-056:釣(yasuzi)釣り針に餌つけ投げ込む楽しさは女性をくどく楽しさに似て
2017-057:おかえり(yasuzi)おかえりと言われた頃の懐かしさ独り暮らしにただいまと言ふ
2017-058:核(yasuzi)区役所で結核検査のレントゲン食堂よって定食食べる
2017-059:埃(yasuzi)庭埃ことしも茂る夏の来る梅雨明けともに躍動はじまる
2017-060:レース(yasuzi) 窓辺にはレースのカーテン風に揺れ午睡を誘ふまどろみの時
2017-061:虎(yasuzi)飴に似た虎目石制うで輪買い にあわぬことと腕にはつけず
2017-062:試合(yasuzi)休場の力士の試合できぬこと体勝負の険しきことよ
2017-063:両(yasuzi)西瓜買い両端おとしカットして少しオシャレな気分あじわう
2017-064:漢(yasuzi)そぎ落とす漢詩の味わい気持ちよく引き算の文 格調美し
2017-065:皺(yasuzi)現代は長寿となれば気も若く皺も少なく若いと言われ
2017-066:郷(yasuzi)帰郷した田舎の山は変わりなく過疎が進むがいつまでもあり
2017-067:きわめて(yasuzi)梅雨寒のきわめて気分の塞ぐ日は煙草ばかりが灰皿つもる
2017-068:索(yasuzi)模索する時間もたまには必要か似合わぬことと知ってはいるけど
2017-069:倫(yasuzi)映倫の基準は実に曖昧で日本文化の良さでもあるか
2017-070:徹(yasuzi)仕事がら徹夜する日もたまにあり生活みだれる朝のけだるさ
2017-071:バッハ(yasuzi)音楽に特にくわしいわけもなくバッハってG線上のアリアでしたか?
2017-072:旬(yasuzi)たけのこの旬も終わって梅雨入りし自然の移ろい大事と思ふ
2017-073:拗(yasuzi)執拗な夏風邪つづく梅雨の日に気分を変える術も知らずに
2017-074:副(yasuzi)副流煙たばこはいつも悪者で高い税金払っているのに
2017-075:ひたむき(yasuzi)ひたむきに生きた覚えもあまりなく怠惰な性をそれなり生きる
2017-076:殿(yasuzi)冬場でも湯殿入らずシャワーのみ簡潔過ぎて情緒が足りぬ
2017-077:縛(yasuzi)家庭と言ふ束縛はなれ独り住み自由のかわりに無くした重さも
2017-078:邪魔(yasuzi)悪い癖やすうけあいの約束は生活しばる邪魔になるのに
2017-079:冒(yasuzi)読書でも冒険小説は手を出せず歳を取るとはそういうことか
2017-080:ラジオ(yasuzi)早朝のラジオ体操参加して帰って食べる朝飯旨い
2017-081:徐(yasuzi)徐徐として暮らす月日の繰り返し歳を取るとは良きこともあり
2017-082:派(yasuzi)狩野派の展覧会を満喫し日本に生まれた喜びを知る
2017-083:ゆらゆら(yasuzi)ゆらゆらと蜃気楼ゆれアスファルト家族ででかけた海の思い出
2017-084:盟(yasuzi)盟兄に手紙したため懐かしむ変わらぬことの大事を思ふ
2017-085:ボール(yasuzi)サイン入りボールを集める友人の自慢話に付き合ふ夕べ
2017-086:火(yasuzi)拓郎の線香花火の歌を聴き遠く流れた時間を思ふ
2017-087:妄(yasuzi)他愛ない妄想をする暇つぶし梅雨があけたら海へゆこうか
2017-088:聖(yasuzi)今さらに聖人君子になれもせず暑さ寒さに明け暮れすごす
2017-089:切符(yasuzi)自由席、切符を買って旅の人 非日常に心が躍る
2017-090:踏(yasuzi)踏み込んだ足跡ながめ雪の原 白一色のシンとする音
2017-091:厄(yasuzi)厄介なギックリ腰にみまわれて日頃の健康ありがたさを知る
2017-092:モデル(yasuzi)職業はモデルなんです言ふ人の違う世界の雰囲気を知る
2017-093:癖(yasuzi)頑張るや、頑張ってなど口癖は心にもない挨拶として
2017-094:訳(yasuzi)言い訳と謝る時のタイミング間違えぬよう計算をする
2017-095:養(yasuzi)養殖の鰻で十分まんぞくし天然の味ちがいわからず
2017-096:まこと(yasuzi)夜の夢まことのようなリアルさを持て余す朝すこし呆ける
2017-097:枠(yasuzi)黒枠の額縁いれた絵をながめ梅雨のながさの日曜の午後
2017-098:粒(yasuzi)粒餡の餅を頬ばり茶を飲んで世間話にあいずちをうつ
2017-099:誉(yasuzi)その土地の誉れの酒に舌鼓 旅の楽しみ土地の肴も
2017-100:尽(yasuzi)歌詠みのふところ深き無尽蔵めぐる季節に尽きることなく
(寄り道コース)
2017-101:轢(yasuzi)人の世に生きる限りは常としてしがらみ多く軋轢もあり
2017-102:鼎(yasuzi)道具市鼎が並ぶ珍しさ置物として価値があるかも
2017-103:スパナ(yasuzi)工具箱スパナをさがして見当たらず代わりのペンチの使いづらさよ
2017-104:欅(yasuzi)公園の欅大木あまやどり夏を切り取る夏の夕立
2017-105:饒(yasuzi)酔ふほどに饒舌になる飲み仲間 休日前の解放の夕
2017-106:鰆(yasuzi)脂のる冬の味覚の寒鰆 刺身もいいが焼いても旨い
2017-107:蠱惑(yasuzi)年相応 枯れたつもりの年甲斐に蠱惑かんじる女性みかける
2017-108:嚢(yasuzi)デパートで手軽なサイズの嚢(さいふ)買い小銭とわけて新札いれる
2017-109:而(yasuzi)キリコなど形而上絵画の画集みる図書館の窓ほこりのにほい
2017-110:戴(yasuzi)戴いたキュウリとトマトざるに入れ塩をまぶしてかぶりつく夏
フェースブックの短歌のグループで詠んでいます
2020-001:君 (靖) 端っこの席で歌った君が代は未だランドセル重く大きく
2020-002:易 (靖) 気休めの趣味が高じて易をたて年金暮らしの辻の灯ともす
2020-003:割 (靖) 機種変で分割にした新品にデータ移して命吹き込む
2020-004:距離 (靖) 一万歩スマホに入れたアプリ見てセーター脱いで春の距離見る
2020-005:喉 (靖) づるづると蕎麦を喉ごしたぐり寄せ下品と言われ粋が転がる
2020-006:鋭 (靖) 腹黒く別れ話しの探り合い鋭くえぐる貴女に惚れる
2020-007:クイズ (靖) 認知症つめを夜切る親不孝こたえの出ないクイズのようだ
2020-008:頑 (靖) 生き方を間違えたのか頑なな妻の無言も二人の罪も
2020-009:汁 (靖) バブルでも吸った事ない甘い汁浴衣の模様に止まった蛍
2020-010:なぜ (靖) なぜなのか酒で地獄の門が開く家庭の中の無言の隙間
2020-011:域 (靖) ふる里に帰省の夏も遠くなり地域の祭りに踊る貴女も
2020-012:雅 (靖) 真剣の蒼い刃の雅びなる気に押し切られ心乱れる *刃(やいば)
2020-013:意地悪 (靖) 美しい従姉妹はとても大人びて世の意地悪に三角乗りする
2020-014:客 (靖) 薄暗い湿った路地のスナックに人それぞれで来る客もあり
2020-015:餌 (靖) 冬眠の亀が目覚めたベランダの去年の餌に命が続く
2020-016:グラス (靖) 大浦のステンドグラスも原爆も好きな子がいたニキビの盛り
2020-017:境 (靖) 国境が見えない国の住人は母国語さえも曖昧に成る
2020-018:位 (靖) 待ち合わせマップの位置が解らないバッテリー切れ便利な時代
2020-019:立派 (靖) 東洲斎しゃれた浮世の十ヶ月庶民も惚れたご立派な鼻
2020-020:梅 (靖) ふる里の祖母が作った梅干しは住む人も無い家に眠るか
2020-021:冊 (靖) 断捨離も出来ずに残す数冊の読む事も無い重たさを持つ
2020-022:自慢 (靖) いびつな世ペットが自慢の子供だと砂の器に造花を飾る
2020-023:陥 (靖) 独り身の溜め息が出る生活は欠陥品の壊れた玩具
2020-024:益 (靖) 人の世に勤め暮らした*補いは益々募る時の腐葉土 *おぎない
2020-025:あなた (靖) うらぶれた商店街の有線にあなた流れる昭和残影
2020-026:岩 (靖) この手など届くはず無い岩壁の奈落に咲いた花など知らぬ
2020-027:慰 (靖) 部屋の隅ころがる愛が震えてる慰撫と言う名の二人の子供
2020-028:刷 (靖) Tシャツのプリント印刷気に入らずアイスクリームの袋と捨てる
2020-029:オープン (靖) 街角やあちらこちらの胡蝶蘭バブルの儚いオープンラッシュ
2020-030:建 (靖) ノンポリで建国記念の意義さえも知らず語らず日本に暮らす
2020-031:芝居 (靖) 番号の交換をする下心さる芝居だと知っていながら
2020-032:委 (靖) 眠たさに身を委ねると星々は忘れるんです浮いてる事を
2020-033:虐 (靖) 野良猫の人を信じぬ狡猾さ虐げられぬ野生の凄み
2020-034:頃 (靖) 付き合った平気で嘘をつく女こどもの頃に見た夢は何処
2020-035:為 (靖) 誰がために鐘は鳴るって小説は訳者のせいで為は平かな
2020-036:撮 (靖) 懐かしい止まった笑いを頬張って撮った時間を捨てる戸惑い
2020-037:あべこべ (靖) 我が子らが父の背丈を通り越しそのあべこべのたくましさを知る
2020-038:私 (靖) 目を閉じて私と言うポンコツを愛でて労るそんな日も有り
2020-039:威 (靖) 夏服のスーツに蝉の声が染む威霊慰撫する七夕の夕
2020-040:スパイ (靖) らあめんにスパイス効かせ夏を食うすする命に吹き出る汗よ
2020-041:拒 (靖) 拒否できぬ夏の猛暑は冷やし飴うちわの風に風鈴を釣る
2020-042:司 (靖) 汚れ役レンタルで見た獄門島に司葉子の消せぬ可愛さ
2020-043:個 (靖) 王将で追加オーダー何個めの餃子頬張る妻よ子供よ
2020-044:施 (靖) 喪服着た施主に並んだ忘れ身の幼き肩に揺れてるトンボ
2020-045:攻 (靖) 夏時雨ビールで割ったウヰスキー速攻効くのだ笑って飲む君
2020-046:わいわい (靖) わいわいと盆の帰省の送り火に山裾の村ムクゲ咲き散る
2020-047:溢 (靖) 神のすむ山に分け入りしんしんと千古の緑(あお)に溢れる水よ
2020-048:殴 (靖) よこ殴りゲリラ豪雨のすさまじさ逃げ惑う人見るは楽しき
2020-049:兼 (靖) 夏祭り浴衣の裾を気にしてる出掛けようよと兼子の笑う
(兼子 けんし 末の娘の意)
2020-050:削 (靖) 放課後の机の上は忘れもの添削された短歌ひと挿し
2020-051:夫婦 (靖) 別れても三世に暮らす夫婦なら来世の花はせめて優しく
2020-052:冗 (靖) くそ暑い夏の終わりに冗漫なよわい重ねてひり出す汗も
2020-053:掌 (靖) 掌、胃のふに置けば暖かき朱い命の灯るうれしさ
2020-054:がらくた (靖) 朝早う散歩がてらは暇つぶしフリマに並ぶがらくた楽し
2020-055:譲 (靖) いつまでも分譲中の看板に止まるカラスもそも知らぬ顔
2020-056:処 (靖) 知らぬ間に夏の歳時の処暑すぎて秋の虫の音コロコロ転がる
2020-057:ソプラノ (靖) 青畳ふうりんの音はソプラノの朝顔のつる簾にもたれる
2020-058:峰 (靖) 秋口に赤いとんぼの舞うを見て藁の先にも遙か峰にも
2020-059:招 (靖) 我の手に招かぬ客の止まりけりまこと楽しき秋の涼みよ
2020-060:凶 (靖) 酸芙蓉秋の嵐にカーテン覗く凶告げ鳥の枝に止まりぬ
2020-061:まじめ (靖) 花のアプリ まじめ草 みて薄笑い洒落を楽しむ愉快な人よ
2020-062:催 (靖) 夏、冬の催事に並ぶあれこれを眺めた頃の懐かしき人
2020-063:幽 (靖) 遠くから、ただ蝉が鳴く公園に原爆ドームの幽寂な骨
2020-064:父 (靖) 遙かなり齢重ねて来世にも父、母、あなたの子と生まれ来る
2020-065:一部 (靖) 日曜日あなたが座ったソファーにはあなたの冊子一部ころがる
2020-066:硬 (靖) 水道の軟水で足る生活にペットボトルの硬水を買う
2020-067:デビュー (靖) デビューしてああだったとかこうだとか屋台の金魚か?昭和のアイドル
2020-068:緊 (靖) 秋の日の運動音痴の思い出は緊張をしたピストルの音
2020-069:裸 (靖) バスタオルいきなり落としてポーズ取る裸婦のモデルのいさぎよきこと
2020-070:板 (靖) 転居して初めて立ったキッチンの白いまな板カビ臭い部屋
2020-071:能 (靖) 昔より腹くだしには正露丸、効能書きの由緒正しき
2020-072:吉 (靖) 舌触り肉の薄さの心地よく吉野家よりも松屋えらびぬ
2020-073:採 (靖) 注射針不快な痛みと採血の瓶に眠った鮮烈な色
2020-074:せめて (靖) コロナ禍の不幸つづきに政府から、せめて貰ったまんじゅうの味
2020-075:擦 (靖) 腹壊し擦れた股間の赤い肌、子が泣かぬようふーふーと拭く
2020-076:充 (靖) ベランダの水を充たしたバケツには赤いまだらのしっぽが揺れる
2020-077:武器 (靖) むしられた肉塊と血が燃えて飛ぶ猛々しき武器シャモの饗宴
2020-078:添 (靖) 病室の卓を彩る生け花と本のページに添えた恋文
2020-079:内 (靖) サロベツの荒涼とした原野にも路線のバスは稚内行き
2020-080:擁 (靖) 海山に親の抱擁、受け育つ野生の命の欲の強さよ
2020-081:札 (靖) 女生徒の改札ぬけて賑やかに待合室の外は雨ふる
2020-082:秒 (靖) ペヤングに熱湯入れて3分の秒針まてず蓋あけた頃
2020-083:剤 (靖) 洗剤で洗うコロナのマスクにも季節よそおい色を楽しむ
2020-084:始末 (靖) 終バスの赤色灯は寂しげで帰る家路に今日の始末も
2020-085:臭 (靖) 枝豆を口に含んで青臭い豆を味わい咀嚼かさねる
2020-086:造 (靖) 山間の人造の池うす暗く得体の知れぬ魚がよぎる
2020-087:栽 (靖) さまざまな栽培物の色ならぶ商店街の花屋、店先
2020-088:しばらく (靖) ふる里のしばらく振りの帰省には住む人もない正月の家
2020-089:里 (靖) 里芋をレンジに入れて皮をむき、塩をふりかけ頬ばる幸せ
2020-090:植 (靖) ベランダで一夏すごした植物を添え木あてたり部屋に入れたり
2020-091:呪 (靖) 呪われて千ねん生きた黒猫が主人の元へ帰る夜(よ)の来る
2020-092:タッチ (靖) 太い指タッチパネルは小さくて誤字の訂正また誤字を打つ
2020-093:属 (靖) 父、母よ約束手形の眷属は来世の何処で何時また会える
2020-094:錠 (靖) 線のある錠剤うまく割れなくてラジオペンチで割れた発見
2020-095:俗 (靖) 凡俗の海に浮かんだ船ひとつ別れたひとの船は遠くて
2020-096:機嫌 (靖) 機嫌とる女(ひと)も居ないし寝正月、街も静かに眠っているし
2020-097:詐 (靖) 看護師に自己申告で詐称する採血前のデータ改ざん
2020-098:鈍 (靖) 乗り換えの駅の名前は?「鈍行の列車が来た」と母の声する
2020-099:任 (靖) 任された買い物メモを落としたよう泣いていたのにお菓子買ってる
2020-100:詠 (靖) 五十年短歌の事など知りもせず題詠100で夢の歌、詠む
《2021年》
2021-001:求(yasuzi)求めても叶わぬことの諦めは捨てもできずに心くすぶる
2021-002:悲(yasuzi)人の世の悲喜劇愛憎まぜこぜにちぎっては投げやってみたいわ
2021-003:店(yasuzi)シャッターの歯抜けが続く商店街それでも露天のたなも在ります
2021-004:普通(yasuzi)平凡なふつうの週のふつうの日ふつうに暮らし普通に眠る
2021-005:絵(yasuzi)チンをした料理のやうな絵空事ひまな時間のおどけ話よ
2021-006:宛(yasuzi)宛先に便りしたため夜の底ポストの口が食べたいと言ふ
2021-007:隔(yasuzi)母方の祖父に似たのか(でたらめさ)隔世遺伝のおきて厳然
2021-008:案(yasuzi)花曇り案内状に招かれて濃茶いただき練り切りいただく
2021-009:きっかけ(yasuzi)酒飲みになったきっかけなどは無く旨い肴で酒を楽しむ
2021-010:回(yasuzi)十分だ回転寿司で満足だ しめのさいごはやっぱり玉子
2021-011:外(yasuzi)外出し夏の盛りの昼下がり八百屋によって枝豆を買ふ
2021-012:洩(yasuzi)庭先の木洩れ日おちる縁がわの落ち葉あつめて焼きますか・芋
2021-013:匹(yasuzi)一匹も釣れぬぼうずの夏の海でかい夕日が汐風なでる
2021-014:料理(yasuzi)日常のやもめ暮らしの料理にも彩りそえる冷やしトマトの
2021-015:机(yasuzi)ちゃぶ台を机がわりの子どもたちノートのあとには夕飯がのる
2021-016:拡(yasuzi)「しっとるけ大風呂敷のありがたさ!」「拡大トークも良くわないかい?」
2021-017:ガラス(yasuzi)ストーブの冬の教室ガラス戸が風に吹かれてカタカタと鳴る
2021-018:区(yasuzi)区役所の食堂やすく腹ふくれ 煙草は駄目よ・・酒もないです
2021-019:未(yasuzi)未曾有の宇宙旅行のはてのはて海にハマナス咲いていますか?
2021-020:忙(yasuzi)忙しなく時はゆきすぎ六十路超え鼻水すする花冷えの夜
2021-021:国会(yasuzi)民権の板垣さんの札の裏そびえてましたね国会議事堂
2021-022:族(yasuzi)ベランダの星空みあげ煙吐くホタル族です冬は寒いぞ
2021-023:導(yasuzi)先導の先生のあとついてゆく一年生のはるかな遠足
2021-024:脚(yasuzi)秋の日の二人三脚うんどう会ピストル鳴って心臓も鳴る
2021-025:昼(yasuzi)酒飲みの常の景色か昼行灯もうしわけなく記憶も飛んで
2021-026:挙(yasuzi)歳なりに軽挙妄動つつしんで静かな場所のだいじな暮らし
2021-027:宜(yasuzi)宜なりとテレビに向かう独り言スパティフィラムのベランダに咲く
2021-028:立(yasuzi)あいさつも立夏の候となりにけりカンカン帽の汗を拭き取る
2021-029:姓(yasuzi)氏素姓あいまいながらも平凡な暮らしのなかに灯るぬくもり
2021-030:ウイルス(yasuzi)驚異的コロナウイルス吹き荒れたマスクの時代の経験値つむ
2021-031:主(yasuzi)糖尿のメインの主菜は野菜だと思うんだけど誘惑のかべ
2021-032:恒(yasuzi)米びつに万恒河沙(まんごうがしゃ=無限に数の多いこと)
と書いてみる増えてみせろと呟いてみる・・・
2021-033:多分(yasuzi)宿酔いの記憶の店はあいまいで何処だったかな???・・多分あの店・・・
2021-034:信(yasuzi)人の世の信ともなればむつかしく正直ばかりで成すもかなわず
2021-035:替(yasuzi)替えのない鬼籍はいった友人の歳をとらない面影しのぶ
2021-036:裁(yasuzi)独り身の気ままな暮らしの裁量は酒でも飲んで好きな肴で
2021-037:送(yasuzi)あなたから送る便りはやわらかく かしこで結び野辺にそよ吹く
2021-038:反(yasuzi)山間に一反ほどの土地を借り父とつくったトマトなつかし
2021-039:憶(yasuzi)AIの時代よ遥かな記憶力パソコンないと世界が止まる
2021-040:コミック(yasuzi)中華屋でコミックひろげビール飲み料理で汚れたページをめくる
2021-041:斜(yasuzi)まどろみのなかに起きゆく休日は斜め射し込む光まぶしき
2021-042:該(yasuzi)たこ焼きのタコはとうぜん該当者ゆでたら赤く照れてるけれど
2021-043:慕(yasuzi)キュウリから冷やしトマトに横恋慕やすい呑み屋で 夏だ!ビールだ!
2021-044:平均(yasuzi)平均の点を遥かにしたまわる楽しやそれなりスカタン人生
2021-045:項(yasuzi)夏盛り木陰に入り一休み項にとまる藪蚊しとめる
2021-046:描(yasuzi)画用紙に似顔を描いてくれる子よ生まれてくれたただそれだけで
2021-047:旦(yasuzi)巴旦杏(アーモンド)ぽりぽり噛じり鼻血だす口いやしきは常の理り
2021-048:出(yasuzi)父の持つカメラは露出むつかしく今はスマホの時代のカンタン
2021-049:徒(yasuzi)遠足の帰りか生徒で賑やかな電車のホームに電車が止まる
2021-050:技(yasuzi)「特技とか特にないけど酒飲みの・・」「酔っ払うとか?」「・・・どうもすいません・・」
2021-051:グリーン(yasuzi)熱々の枝豆グリーンと塩のシロ涼しいグラスにひやざけを注ぐ
2021-052:燃(yasuzi)炭燃えて夏の夕暮れバーベキュー遊ぶ子供ら夜の花火も
2021-053:工(yasuzi)夏休み工作つくる幼子のまじめな顔のほっぺたつつく
2021-054:娘(yasuzi)離れ住む末の娘もはたち超え幼きえがおやなきがおなども・・・
2021-055:拾(yasuzi)三万円、拾った財布を交番へ心が揺れた妙な律儀さ
2021-056:速(yasuzi)高速のエリアに停まりめいぶつの味噌田楽や旨いかまぼこ
2021-057:順番(yasuzi)レジ打ちの順番ならびポイントのスマホ決済うれしくもなり
2021-058:箋(yasuzi)風邪ひきの非日常に処方箋 もらって帰る午後の病院
2021-059:復(yasuzi)夏がきて回復むかふ病床に青葉やさしき初夏の風ふく
2021-060:六(yasuzi)午後六時きがるに入る立ち飲みのサマータイムは未だ陽がのこる
2021-061:いっぱい(yasuzi)もういっぱい夏のビールは景気よくネクタイゆるめ大汗ぬぐう
2021-062:禍(yasuzi)カラス鳴く大禍時にくりだしていっぱい呑み屋ののれんをくぐる
2021-063:正(yasuzi)正月も二日になればはや飽きて近所ぶらつき煙草くわえる
2021-064:笹(yasuzi)お茶請けにいただき物のつけものと笹団子などよばれ楽しむ
2021-065:否(yasuzi)ざれごとの賛否両論にぎわって呑み屋の席に夜も更けゆく
2021-066:ウルトラ(yasuzi)スーパーのウルトラ特価みきり品うれしい楽しい財布も笑ふ
2021-067:炒(yasuzi)中華そば半炒セットのありがたさ腹もふくれて午後の仕事も
2021-068:去(yasuzi)すぎさった過去と折り合いつけてゆく歳をとるとは便利なことよ
2021-069:農(yasuzi)近郊に農地を借りて枝豆とトマトを植えて夏を迎へる
2021-070:筋(yasuzi)立ち飲みの筋の煮込みに七味かけガラス戸越しにきょふも暮れゆく
2021-071:女(yasuzi)世の中は男と女だけで無く性の自由は時代を映すか
2021-072:物語(yasuzi)物語よんで聞かせて眠らせる幼子たちの夢もしずかに
2021-073:滞(yasuzi)出張の滞在おわり帰る日にみやげ探して駅をうろつく
2021-074:圧(yasuzi)夏盛り圧倒的なひまわりの幹の太さに思わず止まる
2021-075:忌(yasuzi)忌み嫌うこともなければ日常の平凡かさね静かな終日
2021-076:ごみ箱(yasuzi)ごみ箱をあさるカラスよ雨の日は辛くはないか傘もささずに
2021-077:上(yasuzi)友だちと上野の森の美術館かえりに飲んだ酒も懐かし
2021-078:菓(yasuzi)水菓子の楊枝を置いて茶をすすり静かにけむる雨の音きく
2021-079:隠(yasuzi)特上の二段重ねの嬉しさよ飯に隠れたうなぎ頬ばる
2021-080:尚(yasuzi)冬を越えベランダ出した植物の尚早だったか卯月の春は
2021-081:あさって(yasuzi)あさっての約束たのしい待ちぼうけ手持ち無沙汰の煙草をつける
2021-082:太(yasuzi)太っ腹しんしん共に健やかで朝からかきこむ牛丼の大
2021-083:欧(yasuzi)欧風(西洋風)な洒落たものには縁がなく日本の隅で終日暮らす
2021-084:顔(yasuzi)庭うちに肥料をまいて水をやり夏をむかえる朝顔のたね
2021-085:蘇(yasuzi)紫蘇の葉の手摘み仕事の草いきれ つくつくぼうしの夏の終わりに
2021-086:簿(yasuzi)出席簿ランドセル置く教室のかびた臭いや梅雨の廊下や
2021-087:苦手(yasuzi)ニガウリは苦手ですけど食べますよ出された物は食べる世代の
2021-088:膚(yasuzi)真夏日のねっとりはりつく皮膚の汗シャワーで流してビールで流して
2021-089:粋(yasuzi)ひとのよに無粋ですけどやりくりしうまくやってたつもりでいたけど
2021-090:稼(yasuzi)稼いでは右から左の散財も世過ぎ身過ぎに独り暮らして
2021-091:看(yasuzi)なつかしい昭和映画の絵看板しょくにん技の手描きの味わい
2021-092:装(yasuzi)鉄橋の筋交い塗装がはげており風の浸蝕執念に似て
2021-093:ラベル(yasuzi)煙草箱からだに悪いとラベルあり分かってますけど・・雨も降り出す
2021-094:規(yasuzi)ゆるくても規則通りは勿体ない時にははめを外すものです
2021-095:価(yasuzi)価値観の相違で別れた人遙か、すればよかったもっと優しく
2021-096:年(yasuzi)送られた三年味噌の味ふかくにほい香ばし朝の食卓
2021-097:働(yasuzi)労働の後の一杯ありがたく旨いと思える口元ぬぐう
2021-098:詫(yasuzi)人気ない夜汽車の窓の白い顔 詫びてあやまる慰めもあり
2021-099:昇(yasuzi)昇鯉(のぼるこい)滝を越えれば竜と成り でかい話につば眉につけ
2021-100:嬉(yasuzi)あなうれし嬉野焼きの絵皿など使うも嬉し愛でる楽しさ
(寄り道コース)
2021-101:にんじん(yasuzi)菜園のにんじんを抜き晩秋の土の匂いにコオロギが鳴く
2021-102:大地(yasuzi)酔っ払い大地と濃厚キスをして前歯欠けても気づきもせずに
2021-103:潮騒(yasuzi)「遠くから潮騒きこえてくるでしょう」布団を敷いた旅の旅館で
2021-104:変身(yasuzi)大虎に変身しますよはしご酒あとは知らない彼方のあなた
2021-105:異邦人(yasuzi)宙(そら)からの異邦人だと言う人と・・場末の飲み屋にたまに来る方
2021-106:蜘蛛の糸(yasuzi)風に乗り飛んできたのかクモの子が 蜘蛛の糸はるベランダの隅
2021-107:アラビアンナイト(yasuzi)シェへラザード千夜一夜の物語アラビアンナイトは砂漠の夜の花
2021-108:赤と黒(yasuzi)赤と黒どちらにするか迷うけど景気よさげなジョニ赤にする
2021-109:狭き門(yasuzi)友宅の狭き門口くぐり抜け暑中見舞いのスイカをわたす
2021-110:みだれ髪(yasuzi)寝乱れた布団もままにみだれ髪夜の勤めのシャワーを浴びる
《2022年》
2022-001:来(yasuzi)去る人と来る人変わる新春の桜便りの春は変わらじ
2022-002:扱(yasuzi)稲扱箸(いねこばし)今は昔の農具とふ豊作いはふ今も昔も
2022-003:巡(yasuzi)港入る巡航船のはなやかさ遙か異国の旅の波間に
2022-004:積(yasuzi)夏てまえ積雨の頃の黄昏は独りで入る一杯飲み屋
2022-005:時期(yasuzi)一時期の記憶に残る思ひ出は別れたひとの癖の面影
2022-006:瞳(yasuzi)どこまでも澄んだ瞳の赤んぼうミルクを飲んで泣いて眠って
2022-007:数(yasuzi)正月は数の子あてに昼間酒しずかな午後に町もうたた寝
2022-008:ひたすら(yasuzi)ひたすらに勤め暮らした訳でなく半端な朝の通勤電車
2022-009:炊(yasuzi)不味いとか旨いわけでも無い朝の水雑炊にかけるごま塩
2022-010:景色(yasuzi)鳥が鳴く山里ゆるむ春景色 窓を開ければそよ風の吹く
2022-011:他(yasuzi)春の日に人をうらやむ他意もなく只ありがたく日向の匂ひ
2022-012:軒(yasuzi)軒に吊る芋や大根干し柿は猫も見あげる色のとりどり
2022-013:いっそ(yasuzi)霧深き川面に浮かぶ船いっそう川の漁師の艪の音きしむ
2022-014:近(yasuzi)近郊の農地を借りて芋作り蒸すか焼こうか秋の終日
2022-015:贈(yasuzi)お茶請けに贈答された菓子を食ふ縁側に寝る春の景色も
2022-016:若者(yasuzi)恥多い若者だったことなども懐かしむ老い苦笑いなど
2022-017:代(yasuzi)平凡に時代の錯誤とも言えず老いを受け入れ時が過ぎゆく
2022-018:足(yasuzi)老いなりに小欲知足を覚えても手も足も出ぬ物価高騰
2022-019:諾(yasuzi)今更に唯々諾々と引き受けて出来る出来ぬで汗がだくだく
2022-020:段階(yasuzi)真夏日に段階をふみ成し遂げる冷えたビールで枝豆つまむ
2022-021:居(yasuzi)地下喫茶ワンドリンクでワンコイン影絵芝居にレトロが揺れる
2022-022:挑(yasuzi)何度目の禁煙挑戦ままならぬ赤いポストに八つ当たりする
2022-023:ロマン(yasuzi)ガラでなく似合わぬけれどそれなりに孤影愛してロマン呟く
2022-024:彫(yasuzi)陶磁器の彫花ながめて茶を啜り風流なじみ草餅も食ふ
2022-025:乳(yasuzi)古里のご神木たる乳銀杏 遠く近くに蝉の声きく
2022-026:紹介(yasuzi)紹介状もたずに訪ふ詫びを入れ天気のことなど話はじめる
2022-027:託(yasuzi)庭先の梅も散るかな春を呼び日々に明け暮れ屈託も無く
2022-028:中央(yasuzi)中央の人事を外れ窓際の席にも慣れて悪い気もせず
2022-029:秘(yasuzi)峠道こどもの霊が出ると言ふ神秘な夏のひそひそ話
2022-030:以(yasuzi)あいうえお以呂波習った学校の校庭に咲く桜なつかし
2022-031:あたふた(yasuzi)生ぬるいそよ風吹いて春そうろうあたふた過ぎた冬よさらばじゃ
2022-032:偏(yasuzi)偏屈な意地を通せば嫌われて月夜の晩に独りぶらつく
2022-033:粗(yasuzi)ふむふむと御粗末ながら歌を詠み桜の下で食べる巻き寿司
2022-034:惹(yasuzi)ゆで卵アジシオかけてうまいうまい目玉焼きなら半熟惹かれ
2022-035:日常(yasuzi)鏡面にうつる日常はんたいで右が左のパラレルワールド
2022-036:醜(yasuzi)老醜と見られぬように気を使い慎み深く生きるのも良し
2022-037:述(yasuzi)罪深き人の世に生き述懐す身過ぎ世過ぎの良きも悪きも
2022-038:襲(yasuzi)あこがれの田舎暮らしは時により因襲もありそれなり暮らす
2022-039:グループ(yasuzi)本棚のグループ分けも雑になり読むのかわたし?いつかの本も
2022-040:探(yasuzi)逆探知ドラマのセリフ聞こえ来る となりの部屋の壁の薄さよ
2022-041:江(yasuzi)いまさらに江戸弁しゃべる人もなくラジオながれる落語に笑ふ
2022-042:懸(yasuzi)船旅で南方の島たずねゆき木々を飛び交う瑠璃懸巣(るりかけす)など
2022-043:小説(yasuzi)私小説 太宰にはまり青い時 病んで過ごした恥ずかしさもあり
2022-044:把(yasuzi)商売はどんぶり勘定 大雑把、勢いの増す日銭の稼ぎ
2022-045:辿(yasuzi)グーグルの地図を頼って辿りつくビールのどごし旨い天ぷら
2022-046:丹(yasuzi)牡丹鍋常温でやる旨い酒ビールなどとは野蛮なものか
2022-047:矢印(yasuzi)矢印の抜けられますの看板は昭和の頃のなごり残して
2022-048:陶(yasuzi)陶磁器の蓋付きどんぶり楽しくてカチャカチャカチャカチャ開けたり閉めたり
2022-049:綴(yasuzi)よいかたち綴れ錦の袋物なにを入れたか香にほいたち
2022-050:棒(yasuzi)あつあつのご飯にのせる棒棒鶏ガツガツ食らふ夏の日盛り
2022-051:かもめ(yasuzi)ゆりかもめ波間に浮かび昼寝かな ひねもす春の午後のひと時
2022-052:茂(yasuzi)友禅の賀茂川染のふうぶつし京の七夕めにも涼しく
2022-053:映(yasuzi)昔日の映画音楽なつかしく頭をよぎる若い記憶よ
2022-054:雰囲気(yasuzi)人の目も雰囲気なども気にもせず そういう人に私はなりたい
2022-055:閑(yasuzi)人の世に生まれついての怠け者 閑に明け暮れひまのプロなる
2022-056:亡(yasuzi)生き恥の流亡かさねた親不孝せんこう灯し父母に詫びふす
2022-057:憧(yasuzi)山間に駄菓子屋はなく芋ばかり憧憬きわめたお菓子のおやつ
2022-058:毒(yasuzi)腐りかけ「怪しくっても食べますよ」「くさってないし未だ毒ないし」
2022-059:出身(yasuzi)墓だけが残る田舎の出身地いまや薄れてとほくとほい日
2022-060:濡(yasuzi)突然のどしゃぶり受けてぬれねずみライター濡れて煙草も吸えず
2022-061:継(yasuzi)連綿と命を継いで未来へとテラといふ名のありがたい船
2022-062:シンデレラ(yasuzi)シンデレラ日本だったら困るよねガラスの草履は割れやすいかも?
2022-063:伸(yasuzi)曇天のさくらの宴で生欠伸 花の雨ふりコップに受ける
2022-064:罵(yasuzi)罵詈雑言ストレスためた奥様に勝てるはずなく三十六計
2022-065:枚(yasuzi)お茶漬けに千枚漬けのつけあわせシャバシャバシャバと旨そうに喰ふ
2022-066:平凡(yasuzi)平凡な春の日ならば陽だまりのゆるく過ぎゆく日向ぼっこも
2022-067:密(yasuzi)あやしげなスナックビルの店名に『秘密の花園』・・・入れないよね
2022-068:帝(yasuzi)冬帝が去ればのどかな春となり過ごしやすさの巡るぬくもり
2022-069:大事(yasuzi)大切に大事にしまふ包み紙「またね来年」あさがおの種
2022-070:儲(yasuzi)あやふやな儲け話があふれ咲く天下泰平どんな花咲く
2022-071:トルコ(yasuzi)涼しげな舶来品のトルコ石めがねを拭いて飽かず眺める
2022-072:遣(yasuzi)小遣いで買った駄菓子を分けあって春の遠足ざんねんなチョコ
2022-073:歪(yasuzi)夕暮れの歩道にのびる歪む影あすは雨だといふことだけど・・・
2022-074:荷物(yasuzi)手荷物のライターさがし見当たらず向けるあてない煙草くやしさ
2022-075:償(yasuzi)離別した家族に払う代償はくすぶり消えぬ胸の熾火よ
2022-076:睨(yasuzi)コップ酒さいごの一杯睨みつけこれが最後とつぶやいてみる
2022-077:与(yasuzi)与太郎のでまかせ話もそれなりに時間つぶしの花が咲くなら
2022-078:青春(yasuzi)青春の記憶もすでに遠くなり痛さや甘さ時も苦くて
2022-079:尋(yasuzi)生活にスマートフォンが入り込み道を尋ねることもなくなり
2022-080:疎(yasuzi)過疎すすむ生まれた土地もおざなりに日々の暮らしに記憶もかすみ
2022-081:比喩(yasuzi)高尚な比喩の例えはままならず似合わぬことのほぞを食ふかな
2022-082:涼(yasuzi)夏盛り商店街の冷やし飴 涼をもとめて一杯を買ふ
2022-083:ドレス(yasuzi)エンドレス「ドラクエ」はまり寝不足のくまのプーさん目の下に住む
2022-084:眺(yasuzi)岬にてたいへいようを眺望しはるかにのびるひこうき雲も
2022-085:浴(yasuzi)浴槽に湯をはり浸かる春の宵ことしもさくらの季節となりぬ
2022-086:鮮明(yasuzi)秋晴れのそら鮮明に空気すみ胸に吸いこむはつあきの風
2022-087:堕(yasuzi)自堕落な性ともなれば今更になすすべもなく終日暮れる
2022-088:耽(yasuzi)「好きですよ耽楽したり耽溺も」「内緒ですけど本当なんです」
2022-089:赴(yasuzi)興に入り赴くままの山ざくら八重の桜のふくらみ優し
2022-090:しぶき(yasuzi)突然のしぶき降りたる にわか雨おもしろきかな夏のあらしよ
2022-091:秩(yasuzi)無秩序に人の身として迷い生き六十路を超えても日々の明け暮れ
2022-092:冷(yasuzi)梅雨入りの商店街の中華ソバ今年も冷やしの、のぼり旗吊る
2022-093:無駄(yasuzi)新芽ふく気候となれば気もゆるみ商店街で無駄話など
2022-094:誓(yasuzi)誓いなどたてもしないし義理もなくその日暮らして明日を迎える
2022-095:凄(yasuzi)すごいこと教えてあげると笑ふ子よこどもの世界の凄いこときく
2022-096:飯(yasuzi)夏盛り氷ぶちこみ涼を喰ふ すすりかきこむ茶漬けの飯よ
2022-097:特別(yasuzi)特別なこともない日の夕涼みとなりの猫がごろり横なる
2022-098:酔(yasuzi)気だるさの陽射しのなかの寝ぼけ顔ゆうべの酔いものどかな休日
2022-099:白(yasuzi)シロの名は白い色からつけられて兄弟たちにはクロも居ります
2022-100:翌(yasuzi)翌朝のてるてる坊主を軒につり すこやか眠る秋の遠足
《2023年》
2023-001:引(yasuzi)知らぬ間に身に染みついた駆け引は幼き瞳ひかり背ける
2023-002:寝(yasuzi)若き日の履歴書ひらき読み返し趣味は昼寝と書いて候
2023-003:古(yasuzi) 古時計こたつの外は冬景色たばこくゆらし時のつげ音
2023-004:耳(yasuzi)寒さほどこたえる歳に成りと言ふ耳ちぎれると手で包み込み
2023-005:程度(yasuzi)ほどほどの距離を保って暮らしゆく家族いふ名の温度程度よ
2023-006:確(yasuzi)おはじきの数を確かめ巾着のひも括りゆく幼手よ
2023-007:おにぎり(yasuzi)遠足のおにぎり頬ばる笑顔には未だこの先に菓子があります
2023-008:較(yasuzi)比較的あさせ続きの海ですの貴方の声と船に揺られて
2023-009:一時(yasuzi)蝉しぐれ時の彼方に溶け込んで静けさ涼む一時の雨
2023-010:愚(yasuzi)愚才なり愚痴愚痴過ごす人の世に愚問愚答もわざとでは無く
2023-011:イメージ(yasuzi)今遠く五十余年の年を過ぎイメージ浮かばぬ故郷初恋
2023-012:娯(yasuzi)人の世に誤り生を貰い受け六十余生の娯楽残生
2023-013:講(yasuzi)春の宵ママさんバレーの講堂は若い熱気と桜花舞い込む
2023-014:ほんのり(yasuzi)頬を染め歯抜けで笑う幼子よただほんのりとただほんのりと
2023-015:戸(yasuzi)白玉を井戸に冷やして夏盛りキュウリ頬ばる縁側の午後
2023-016:険(yasuzi)人の世の険易尺度を泳ぎ切り露に消えるか人の常とは
2023-017:俳句(yasuzi)曙の春の霞をひとしずく懐入れて俳句輪廻と
2023-018:就(yasuzi)古代より波濤万里の就航は去来昔日いまの礎
2023-019:賀(yasuzi)洗い髪加賀屋の駅で待つといふ冬の最中のひとの黒髪
2023-020:みじめ(yasuzi)みじめさを知れば優しくなるといふ冬の先には春のあけぼの
2023-021:雫(yasuzi)かけうどん夏の盛りの汗雫のれんの先に一陣の風
2023-022:重(yasuzi)病床の一人暮らしの拙さは始末つけれぬ老の重ね着
2023-023:毎日(yasuzi)毎日の勤め暮らしの街なかに色目の違う風吹けと待ち
2023-024:禿(yasuzi)彩りの春花秋月あざやかに三十一文字の古文禿筆
2023-025:混(yasuzi)知らずして混迷の世に生を受け不惑の年もとうに過ぎゆき
2023-026:子ども(yasuzi)生き別れ子どもの先のことなどを気にかかりつつ電話見つめる
2023-027:著(yasuzi)昔日の右肩上がりは今遠く子育て世代顕著憂患
2023-028:役所(yasuzi)役所から便りが届き手続きの判子を持って文化を想う
2023-029:絶(yasuzi)絶交の言葉が流行る年ごろは年期入ったランドセルたち
2023-030:グラム(yasuzi)清濁のグラム惑わり混濁の露の雫か住み暮らす果て
2023-031:貿(yasuzi)南方の貿易風の波を受け海洋遙か海の眩しさ
2023-032:抜(yasuzi)六十路過ぎ不抜不屈にほど遠く迷うばかりの冬の日向よ
2023-033:ひらひら(yasuzi)ひらひらと昭和歌謡の懐かしさ商店街の不意打ちに揺れ
2023-034:倣(yasuzi)迷い込み出口の見えぬ抜き差しに模倣からなる一つの道も
2023-035:測(yasuzi)測深の流れに止まる枯れ紅葉やがて流れて海に続くか
2023-036:削除(yasuzi)離れ住み時の止まった写真には削除できない家族の記憶
2023-037:荻(yasuzi)アシや荻むらがり朽ちる浜づたい海は重たく先のハマナス
2023-038:ゲーテ(yasuzi)図書館のゲーテの棚は通り過ぎ時間つぶしにヨハンを探す
2023-039:吊(yasuzi)君の手は七色辛子を切り束ね魔除けにすると玄関に吊り
2023-040:紺(yasuzi)紺青のブラウス風に揺れている仕舞い忘れた青い風鈴
2023-041:覗(yasuzi)高騰のスーパーの棚もやし買い安い助かる廻りを覗く
2023-042:爽やか(yasuzi)長雨の晴れ間にのぞく青空はありがたきかな爽やかな風
2023-043:掻(yasuzi)搔敷の南天あらふ冷たさよ命を食べる性(さが)の行い
2023-044:批(yasuzi)喫茶店しばしの憩いくゆらして批点だらけの営み思う
2023-045:筏(yasuzi)大川に船を浮かべて重箱の筏ごぼうの歯ざわり楽し
2023-046:憐れ(yasuzi)孤影落ち路傍の花に憐れみる勝手な老いの思い煩い
2023-047:塀(yasuzi)陽炎に揺れる小道の煉瓦塀どなたが住むかモダンな家よ
2023-048:伺(yasuzi)病床の主人伺う老猫よ今日は柱のかげに隠れて
2023-049:水仙(yasuzi)庭さきの松の根元の水仙よ冬寒の空群れて咲くかな
2023-050:範(yasuzi)人生の師範と慕う我が師匠コロナに罹り参った笑ふ
2023-051:履(yasuzi)雅なる京の遊びにゑひもせす土産物屋で京草履買ふ
2023-052:全体(yasuzi)全体の記憶は何時もおぼろげで素面行かれぬ路地裏の店
2023-053:党(yasuzi)ふる里の一族郎党なつかしく山間の村過疎に消えても
2023-054:いよいよ(yasuzi)いよいよと春の到来うれしさよ梅先駆けて桜うつくし
2023-055:釘(yasuzi)道拾う用を満たさぬ折れ釘に我を重ねて捨てに捨てれず
2023-056:謙(yasuzi)稲穂垂れ重く実った豊作に謙遜せずに家族に笑う
2023-057:ライン(yasuzi)うらぶれたラインゲートの飲み屋街スピーカーから あぁ八代亜紀
2023-058:箇(yasuzi)三箇日ゆっくり起きる元旦の餅は煮ますか?焼いてみますか?
2023-059:診(yasuzi)坂上の白い古びた診療所看護婦が住む二階の窓辺
2023-060:醤油(yasuzi)つきたては砂糖醤油に餅絡め海苔を巻いても白のままでも
2023-061:庇(yasuzi)しとしととくろぐろ溶ける暮れつ方軒の庇に眠る子つばめ
2023-062:魔(yasuzi)好事多魔恐れ入谷の鬼子母神 験を担いで石橋叩く
2023-063:こぶし(yasuzi)里山に春を知らせる朴訥なこぶしの花はとても優しい
2023-064:閣(yasuzi)新世界通天閣にビリケンさん浪花の街のディープ入り口
2023-065:状(yasuzi)病状の膿んだ疲れの硬枕独りの身にも春の足音
2023-066:二階(yasuzi)夕立のすぎた二階の窓を開け息をしている街の静けさ
2023-067:乞(yasuzi)乞食の身となり旅の山頭火酒を愛して同行二人
2023-068:捕(yasuzi)捕虫網せみのしょんべん夏休みアイス頬ばる ぼういがーるず
2023-069:トンネル(yasuzi)眠る豚クイズの答えはトンネルと笑うあなたも二十歳を超えて
2023-070:請(yasuzi)満足のいかぬ世に生き仮普請とうに忘れた夢のあとさき
2023-071:感謝(yasuzi)感謝などできぬ真夏の炎天下冷えた茶店で涼の一服
2023-072:惰(yasuzi)生まれつき怠惰な性はつきまとい六十路過ぎても貪り飽きぬ
2023-073:からくり(yasuzi)世の中のからくりなどは縁が無く無能の人とけふも笑われ
2023-074:腫(yasuzi)腫れた顔宿酔い続く酒地獄あたひ千金いっぱいの水
2023-075:案内(yasuzi)春先の桜便りの案内はめぐる月日に齢重ねて
2023-076:灰(yasuzi)善きことの喜び増して小春日よ祝いの席の灰酒甘く
2023-077:畳(yasuzi)春雷の春間近いといふ便り畳の堅さごろり寝そべる
2023-078:スマート(yasuzi)スマートなスマホで払うキャッシュレス時代の波とポイント貯める
2023-079:僅(yasuzi)僅少な高い酒なら有難く旨い肴も春の宵かな
2023-080:載(yasuzi)折々に積もり積もった事柄の載量越えて溜息を吐く
2023-081:手ごたえ(yasuzi)手ごたえのかすかな温みたぐり寄せおぼろ月夜の人の恋しさ
2023-082:侮(yasuzi)侮蔑され別れたひとも はや老いて時の彼方に顔も忘れて
2023-083:浄(yasuzi)氷入れ浄水器から水で割り檸檬投げ入れ焼酎を飲む
2023-084:授業(yasuzi)参観日授業が終わり学校の案内するといふ子頼もし
2023-085:潤(yasuzi)美しい柔いうなじの潤沢さ若い女性の春のときめき
2023-086:派手(yasuzi)路地裏の派手な模様のワンピース物干し揺れる風と遊んで
2023-087:汰(yasuzi)逝きてなほ若い身空のひとたちの懐かしきかな夢の音沙汰
2023-088:メンバー(yasuzi)先ほどの事も忘れる儚さよ リメンバーとは言い聞かせても
2023-089:癒(yasuzi)病床のトンネルを抜け快癒した床上げ祝う赤飯を炊く
2023-090:諮(yasuzi)脆弱な年寄り暮らす我が国の誰に諮ふのか身の振り方を
2023-091:ささやか(yasuzi)水ぬるむ頃にもなればささやかに冬乗り越えた祝いの酒も
2023-092:房(yasuzi)房総の沖に遙かな客船の夢の波間に異国を越えて
2023-093:預(yasuzi)老いてなほその日暮らしの明け暮れに預貯金も無く夢の酒汲む
2023-094:希望(yasuzi)希望燃え夢見た頃の燃えかすは疲れ入りますあっさり捨てる
2023-095:滴(yasuzi)あまだれの雫一滴受け給ふ夢幻なるかな狐嫁入り
2023-096:雌(yasuzi)一対の風情みとめる夫婦滝 より添うような雌滝いとおし
2023-097:天気(yasuzi)山荘の山の天気は雨つづき明日は下りると言ふひとも居り
2023-098:辱(yasuzi)屈辱の澱が溜まって底が抜け大酒喰らい死んだふりする
2023-099:備(yasuzi)歌詠みに備えがあれば苦労せず日々の暮らしのなかの歌詠む
2023-100:掛(yasuzi)春霞のどかな山に野掛けして野天楽しや霞の茶菓子
(寄り道コース)
2023-101:甲(yasuzi)生きるため勤め暮らした煩いは善いも悪いも甲斐もなきこと
2023-102:乙(yasuzi)春ならば乙女椿の咲き見ごろ蜜吸う虫よ空を飛び交う
2023-103:丙(yasuzi)如月も丙夜となれば肌寒く燗した酒と炬燵にもぐる
2023-104:丁(yasuzi)浜先に浜沈丁の花が咲き今年も夏の来たことを知る
2023-105:戊(yasuzi)野の原に弾の転がる夢の後はるか古代か戊辰の戦
2023-106:己(yasuzi)己とは宇宙に独り在るを言ふ そんなものかと沢庵かじる
2023-107:庚(yasuzi)日が暮れて長庚ながむ宵のくち夏の祭りの提灯ともる
2023-108:辛(yasuzi)お茶請けの甘辛煎餅かみ砕き庇に吊れる柿と干し芋
2023-109:壬(yasuzi)京壬生菜みやげの品もありがたく常温でやる日本酒すすむ
2023-110:癸(yasuzi)癸(みずのと)よ終わり始まり兼ね備え終わりの来ない円環に帰す